【ハイキュー!!】Assorted Box 短編集
第8章 2年の空白の終わり (黒尾 鉄朗)
side 皐月 和奏
コートの中でボールを追う元彼を見つめる。
付き合っていた頃より背も伸びて、かっこよくなったクロ。
付き合い始めた時はまだお互い中学2年だった。
友達にからかわれて、ヤケになったクロが付き合うかと聞いて来た。
別にクロが私の事を好きだとは思わなかったけど、そんな私のプライドなんかより、クロの彼女って肩書きは魅惑的だった。
私はずっとクロに片思いをしていたから。
付き合ってみると、クロは予想外に優しかった。
連絡も凄くマメにくれたし、下の名前で呼ばれた事も…今思い出しても心が温かくなる。
手を繋ぐとドキドキして、初めてキスした時は泣いてしまうくらい嬉しかった。
もしかしたら、クロは私の事を好きになってくれるかもしれない。
そんな期待を持ち始めた中学3年の冬。
高校は別々だけど大丈夫と、お互いに言い聞かせた。
メールもする。
電話も毎日する。
少しでも時間があれば会いに行く。
高校生になったら、もっと遠くまでデートに行こう。
数え切れない程の約束をしたけど、果たされた約束は一つも無かった。
クロからの連絡が少なくなるのを感じながらも、私も新しい環境に馴染むのに必死だったんだ。
たぶん、先に疲れてしまったのは私の方。
私のことが好きかわからない彼氏より、私の事を好きだと言ってくれる新しいクラスメイトの方がいいと思ってしまった。
最後にクロから連絡が来たのは高校1年の初夏の頃。
いつもと変わらないクロのメールに、私は何の返信も出来なかった。
その後、付き合ったクラスメイトとはすぐに別れた。
彼と付き合って、自分がどれだけクロを好きなのかを思い知らされた。
クロとは1年近く連絡を取ってなかったけど…、忘れなきゃと自分に言い聞かせないといけないくらい、私はまだクロの事が好きだった。
そんな時、友達に誘われて行ったバレーボールの応援。
対戦校がクロの進学した音駒だって知ったのは体育館に着いてからだった。
1年ぶりのクロに無意識に涙が溢れて…友達には凄く心配されたっけ。
それから音駒のバレー部の試合の応援に行くようになった。
応援と言っても、ただコートの中のクロを見ている…いや、目が離せないだけなんだけど。
私に気付いて欲しいような、未練たらたらな私には気付いて欲しくないようなそんな気持ちで。