第7章 行かないで、東京
「…牛島」
牛島と高岡さんがなんともイイ感じに抱き合っている写真が載っていた。キスをしてるようにも見える。ボケてる写真だからなんとも言えないけど…
「……へーえ。インハイ予選前に余裕じゃん。さすがうちの学園のスーパーエース」
「リカコ、牛島に怒らないでよ。お願いだから」
「……それは事情による。瀬見とか天童は今いるよね?ちょっと聞きにいってくる」
「リカコ!!」
リカコが超ダッシュで男バレの体育館に走っていく。足の速さだけだったら女バレ一かもしれない。私は必死に追い掛けるしかなかった。
ちょうど男バレも休憩中らしく、一年生達は体育館入口付近に座ってみんな涼んでいた。その中に赤い髪の天童くんを発見してリカコは一目散に天童くん目がけていく。
「天童――――!!!」
「うっわ!諸越ちゃん何!?」
リカコの叫びに驚いた天童くんは持っていたドリンクボトルを落としていた。隣にいる山形くんも目を見開いて固まっている。
「天童さ、聞きたいことあんだけど」
「う、うん、何?」
いつも余裕そうな天童くんにこんな顔させるなんて本当リカコ勘弁して…。私は半ば泣き出しそうな気持ちを抑えて天童くんにゴメンと心の中で謝った。
「牛島ってさ、高岡さんと付き合ってんの?」
なんのオブラートに包むことなくリカコは直球で質問した。隣の山形くんは「あー」と唸っている。
「…新聞見たんだ?」
「見た。実際どうなの?あんた達のほうが普段あの二人見てるでしょ?」
「…まあ、合宿あたりから仲良さそうだなーって感じたくらいかナ、俺らは。ね、隼人クン」
「まあなー…若利が教育係だから前からよく一緒には居るけど、最近はとくに仲良さそうだよな」
ふーん…。なんだ、私にあんなキスしておいて高岡さんと付き合うことにしたのか。別にいいよ。私だって天童くんって彼氏もいるんだし。でも、なんだかやっぱり胸は痛い。
「…てか、なんで諸越ちゃんそんなに怒ってんの?」
「えっ…それは…あれ…あれだからだよ…」
…まさか牛島と私が合宿中にキスしたからだなんて天童くんには言えず、リカコはどもり始めた。
「…若利クンもモテるよねー…合宿中も女バレの先輩に何人か告られてたし」