第7章 行かないで、東京
「牛島、告白されてたんだ…」
中等部の頃からよくある事ではあったけど、高等部に入ってからは初めてのことで動揺が隠せない。天童くんの前でこんなに動揺したくなかったのに。
「…まあ、若利クンはぶっちゃけ彼女作ってくれたほうが色んな子にまとわりつかれなくて俺らもいいよね」
「まあなー…体育館周りで見学する女子も最近増えてたし」
天童くんと山形くんが少し呆れたように言う。最近、男バレの体育館はそんなことになってたんだ…全然知らなかった。インターハイ予選でいっぱいいっぱいだったから…
牛島は今は東京で開催されている全国大会に出場している。マネージャーである高岡さんも当然一緒に東京に行っているわけで。二人は試合の後に一緒に過ごしたりするのかな。牛島の大事な試合の時に支えてあげられるのは私ではないんだという事実に目の前が真っ暗になる。
もちろん男バレには全国に行って欲しかった。だから無事に全国へ行けることになって本当に嬉しい。嬉しい気持ちに嘘はないけれど、自分がその場所に共に立てないことがこんなにも悔しい。
「…なつみ、戻ろ。休憩終わる」
リカコに引っ張られ女バレの体育館へ向かう。東京の体育館はここよりも暑いだろうか。いくら牛島だって公式試合では緊張するのを私はちゃんと知っている。ちゃんとサーブは打てているかな。
「…なつみ、天童が怪しんでた」
「…うん、わかってる」
リカコは心配そうに私を見てるけど、私にもどうしようもない。私は今ここにいない人のことを想っているわけで、一応天童くんもそれは了承済みのハズなのだ。天童くんが許してくれる限り、この我儘な気持ちは抑えることはできない。
お昼休憩まであと30分。レシーブ練習をこなしながら自分が行けなかったインターハイのことを考える。県大会優勝の新山女子は1回戦勝ち上がっただろうかとか、色んな学校の女子も応援にきているだろうか…とか。
ねえみんな、牛島のプレーを見た?
格好いいでしょう?フォームが綺麗でしょう?強くて真っ直ぐなプレーでしょう?
合宿で牛島にキスをされた時から、もう私は気持ちにブレーキが掛けられないでいた。牛島に好きだと伝えてみたい。伝えた時の牛島の反応が見たい。
たとえ受け入れてもらえなくても。
「……東京になんて行かないで」