第6章 奪ってもいいか
「あ、えーと、汗汚いからもう大丈夫だよ」
引き攣った笑顔で必死に誤魔化しながら牛島の手を払う。牛島は私の額の汗を拭いながら顔の横にかかっていた髪を耳にかける。そんな一連の動作がまるで彼氏のようで。間違っても牛島がする行動とは思えなかった。
「…昨日は随分過激だったな」
「………え」
「そんなに気持ち良かったのか?」
少し興奮しているような熱っぽい目で見つめられる。耳に触れられた手は優しくヤワヤワと耳を弄り出す。
「あ、や…牛島…」
「……そんな声を出されたら天童も止まらなくなるわけだ」
スッと牛島が屈んできて私の首筋に唇を寄せてきた。そのまま愛撫をするように肩のほうまで降りていく。
「…な、んで…?」
優しく首筋にキスをされてゾクゾクする疼きを我慢しながら牛島に問い掛ける。なぜこんなことをするの…?
「……緑川、嫌なら拒め」
そんな言い方ズルい。拒めるわけないんだから。でも私は天童くんの彼女で。牛島とこんなことを続けるわけにはいかない。そう思うのに。与えられる快感に逆らえない。
「…俺が先に見つけた」
「……え?」
「この柔らかそうな脚も、甘い声も、この唇も…」
牛島の両手が私の顔に触れて上向きにさせられる。腰に響くようないつもの低い声が私のすぐ側で紡ぎ出された。
「お前は…俺を拒まないんだな」
そう言うと牛島は私の唇にそっと唇を重ねてきた。