第6章 奪ってもいいか
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就寝前の点呼に間に合うように急いで女子部屋に戻ってきた。かなり広い部屋なので、女バレの一年生は全員この部屋に収納されている。各自布団の上でストレッチしたりスマホをチェックしていたり自由に過ごしていた。
「…緑川さん、牛島くんと会った?」
そう問いかけてきたのは成田さんだった。
「うん、牛島と会ったよ。どして?」
「牛島くん、天童くんのこと探してるみたいだったから。それだったら緑川さんと一緒のはずだから渡り廊下にいると思うって私が教えたの。二人がデートしてるのに申し訳ないな~って思ったんだけど…」
「…ううん、大丈夫だよ」
成田さんは何も悪くない。元はと言えばちゃんと部屋に戻っていない私と天童くんが悪いんだし…
「…なんかね、それを伝えた時の牛島くん、ちょっと怒ってる感じだったの。だから緑川さんたち牛島くんに怒られちゃったんじゃないかなーって心配でさ。ほら、牛島くんって一年のリーダーだしすごく真面目だし」
…本当は喜んではいけないんだけど。私の中の汚い部分が騒めいてくる。牛島は何か思ってくれたのかな。私が天童くんと一緒に居て、嫌だって思ってくれたりしたのかな。
本人に直接ぶつければいい気持ちからずっと逃げて逃げて、楽な思いをさせてくれる天童くんの側でひらすら守られているくせに、未だにずっとずっと私の心は牛島だけを求めている。
「緑川さん?やっぱ怒られちゃったの?ごめん、私のせいもあるし、私も明日牛島くんに謝っておくよ」
「…ううん、違うの。成田さんのせいなんて全くないから」
こんな些細なことで。毎日天童くんと一緒に積み重ねてきた時間を踏み越えてくる。明日からもしばらく合宿で逃げ場がないというのに、どうすればいいんだろう。とりあえず明日の強化メニューにこのモヤモヤを全部ぶつけようと決意して、私は布団に入った。