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まだまだ青い白鳥たち

第2章 気付き


「…それで、俺が教育係というポジションになった。俺が一年生のリーダーだからということもあって」
「そうなんだ」


練習の合間に雑用も教えなきゃならないなんて牛島も可哀想なんだけど、牛島みたいなTHE・無愛想人間に教えてもらわなきゃいけないマネージャーの子にも少しだけ同情した。あ、牛島のこと好きみたいだから別にいいのか。


「…それで」


牛島の話はまだ終わっていなかった。私は「うん?」と続きを促しながら牛島の横顔を見る。


「俺は当分の間、彼女と行動をすることも多くなるだろう。…しかし、その、誤解をしないで欲しいんだ」
「…誤解?」


歩いていた足を止めて牛島は私の目をジっと見つめる。それはひどく真剣なもので、思わず唾を飲み込む。


「…緑川に変に思われたくない。俺もなんと言ったらいいのか分からないんだが、なぜかそう思ったんだ。それをどうしても伝えておきたかった」


それは――。いくら経験が乏しい私にでもわかる。牛島はいま私に何か強い気持ちをぶつけている。ただの『恋愛感情』と言ってしまうと陳腐に感じてしまうほどの、強くて純粋な気持ち。夕日に染まった牛島の綺麗な髪を見つめながら、自分の頬も同じように赤くなっていくのを感じた。


「…そっか。ありがと」
「ああ」


(ねえ、まさか牛島って私のこと好きなの?)


そんな質問をして、この場を友達風な雰囲気に戻すことも考えたんだけど、私はそうはしなかった。なぜか…したくなかった。牛島とのこの距離感が心地いいと感じてしまったから。私のことを見る目が、友達というよりは『女』を見ている目だと思った。それはもうなんとなく直感で。恥ずかしいんだけど、やっぱり心地いい。


私は…牛島に『女』として見られて嬉しいみたい。


「では、また学校で」
「あ、うん。送ってくれてありがとう」


ふと牛島がジャージのままでカバンさえ持っていなかったことに気付く。いま走り去っていった方向は白鳥沢学園だ。牛島の家はここから反対方向だし。


「…もう、これ以上いろんなことしないで…」


牛島若利という男は何も考えていないクセに直球でくるからタチが悪い。
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