第2章 気付き
部活も終わりに近付いて、私がボールをせっせと片付けていると、どうやら体育館の入口に牛島が到着したようだった。『ようだった』とは、私が自分で気づいたわけではなく周りのザワつきから察したのだ。どこにいても目立つ奴、牛島若利。
先輩方やチームメイトに「旦那が迎えにきたよ!早く帰りな!」と散々言われ、私は渋々片付けを切り上げて入口へ向かった。
「…悪い。男子のほうが早く終わったようだな」
「そうみたいだね。待ってて。今カバン取ってくる」
「ああ」
それにしても突然一緒に帰りたいなんてどうしたんだろう。中等部の頃はたまに一緒に帰ったりしてたけど、高等部にあがってからは一緒に帰ることはなくなってたのに。…まあ、牛島が寮に入ったからなんだけど。
「おまたせ。じゃあ帰ろう」
「ああ」
後ろから女バレの皆の視線が痛いけど無視無視。次の角を曲がったらもう体育館からは見えないはず。
「…でもさ、突然どうしたの?牛島高等部になってから寮だったよね?」
「ああ、今日は家に帰る用事があるんだ。だから緑川と話がしたかった」
「…ふーん」
なかなか本題には入ろうとしないな。何か話しづらいことなんだろうか。こちらから色々質問してみるか…。
「…ところで、マネージャー採用したんだって?うらやましいなー。女バレにだってマネージャーいないのに」
「ああ、そのことなんだが」
げっっ!まさかマネージャーの件で話があったのか。私はマネージャー経験ないから分からないんだけどな。雑用を教えてやって欲しいとかだったらどうしよう。私がそんなことを考えている間、牛島は不思議そうな顔で私を見つめていた…が、口を開いた。
「昨日その女子マネージャーと話していたのだが、彼女は中等部の俺の試合を見てバレーに興味を持ったそうだ。昨日も監督に俺のスパイクの良さを力説していた」
「へー…」
それって、バレーじゃなくて牛島に興味を持ったのでは…?って誰にでも分かるようなことが牛島には分からないらしい。鷲匠先生!監督なら、目をハートにしてる女子を見抜いて下さいよ!