第2章 気付き
「「「採用っ!?」」」
山形くんの情報に、私達三人は声を揃えて驚いてしまった。天童くんは食べかけていたカツ丼をポロっとこぼす。まさか採用になるなんて…。鷲匠先生どうしちゃったんだろう。
「うちは何しろ人数が多い部だろ?雑用は一年生が日替わりでやってるけど、それだと一年生の練習時間が少なくなるってその女子マネの子が主張したらしくてさ。まあ、その通りなんだけど」
「でもそれがうちの伝統ってヤツじゃないの?女子がいると問題起きる可能性も高くなるから鷲匠先生は受け入れないって噂だったけどネ。」
「問題ってなんだよ」
瀬見くんは分からなかったみたいで不思議そうに尋ねた。私はなんとなくだけど分かってる。きっと恋愛絡みとかそういうのだ。
「…英太クン分かんないの?ほら~…ぶっちゃけデキちゃったりとか…サ」
「あー…なるほど」
こっそりお付き合いするとかなら可愛いほうだけど、やる事やってたらそりゃ妊娠は避けられない問題だ。白鳥沢はプロ志向の部員も多いから、女子生徒妊娠させたなんて人生の一大事になってしまう。…まあ、高校生の妊娠は一般的な生徒でも大問題なんだけど。
「…なつみちゃん頑張ってネ」
「なんで私が頑張るの?」
突然なぜか天童くんに励まされる。練習を今以上に頑張れってことかな?確かに課題はたくさんあるんだけど…
「辛くなったらいつでも俺がいるからネ。あ、英太クンもいるよ?」
「なんのことか分かんねーけど、なんかあればいつでも言えよ。同じセッターだしな」
「…?ありがと?」
天童くんが何を言いたいのかはいつも通り全然分からなかったんだけど、とりあえず頼もしい言葉に甘えておくことにした。結構話し込んでいるうちに食事も終わって、私達は食堂で解散した。
昼休みに男子バレー部員達とがっつり話してしまったから、無性にバレーがやりたくなってしまった。今日の朝練も記録係や雑用しか出来なかったし。けれど怪我が完治するまでは我慢だ。今無理すると治るのが遅くなってしまう。
私は復帰した時の練習メニューを頭の中で組み立てながら、教室へと戻った。