第2章 気付き
「……高身長女子…。いい」
「は?」
山形くんから何かボソっと聞こえてきたけど、よく聞き取れなかった。なんなんだろう。
「…ちょっと隼人クン、別になつみちゃんはそんなに背高くないでショ。もう食べ終わってるならどいてくれない?」
天童くんのその言葉で、山形くんも一年生なのだと悟った。天童くんと瀬見くんは各々トレーを持って戻ってきていた。そして山形くんは天童くんの言葉を無視して私の正面の席に座る。その隣に天童くん、私の隣には瀬見くんという形でなんとも奇妙なランチタイムが始まった。
「なつみちゃんが大きいんじゃなくて、隼人クンが小さいだけでショ」
「てめ、天童!日本人男子の平均知ってっか?お前らがデカすぎんだよ。それにリベロは身長関係ねぇ!」
「山形くん、リベロなんだ?」
大柄でパワー系選手の多い白鳥沢で、山形くんのような体格といえばリベロ以外には考えられないんだけどね…。
「おうよ!こんな面白ぇポジション、絶対やめられねーよ」
「リベロは要だもんね。ほんとスゴイと思う」
女バレの先輩リベロ達も本当にスゴイ人が多い。守備の要だからメンタルが強くなるのかな。粘り強くて頑張り屋が多い印象だ。
「お!なつみちゃん分かってんじゃん!やっぱ選手は違うよなぁ。理解があるところもイイ!」
「だから口説かないでヨ。それに、なつみちゃんは身長高い男のほうが好きだもんね?」
うっ…天童くん鋭いな。もう私のコンプレックスをお見通しなのかもしれない。私はとりあえず無言を貫いて、目の前の唐揚げを頬張った。オススメされただけあって美味しい。下味しっかり系だ。サラダもドレッシングが凝っていて美味しい。天童くんにデートプランとか任せたらきっと楽しいデートができるに違いない。
「そういえば聞いたか?女子マネージャーの話。」
山形くんがふいに話題を変える。昨日の子の件だよね。そういえばどうなったんだろう。うちの部活には関係ないけれど、伝統ある白鳥沢男子バレー部のマネージャーとなれば、やはり結果は気になる。
「あー…昨日チラッと見掛けたわ。なんかちっこくて気ィ強そうな女子だったな」
「なに英太クンもうチェック済み~?」
「そーそー、その女子だけど採用されたらしいぞ」