第2章 気付き
「…ねえ、あそこの一年の二人、男バレ推薦組の子達じゃない?」
「あ!絶対そうだよ。背高いしカッコイイ!やっぱり男バレは毎年カッコイイ人多いよね~!」
後ろから女子達のヒソヒソ話が聞こえてくる。やっぱりバレー部目立つよね。街中でも普通に目立ちそうだもん。
「え、じゃあさ。一緒にいたデカイ女の子誰?マネージャーとか?」
「あの子こないだ体育館で見掛けたよ。女バレの子だよ、確か。マネージャーにしてはデカすぎでしょ」
「はは、確かに!しかもうちは女バレ弱いんでしょ?男子に体育館譲ってあげればいいのにねー」
…イラっとするよりも、なんだか悲しくなってきてしまった。私もインハイ目指して部活に全力で打ち込んでいるのに、男バレのオマケみたいに思われていたこと、それに白鳥沢の女バレが弱小だと思われていたこと。なんだか先輩達やチームメイトまで馬鹿にされたみたいで。
「うちの女バレは弱小じゃないぜ?」
ヒソヒソ話の女子達に向かって、知らない男の子が話に入ってきた。誰だろう…?背はそんなに高くない。バレー部関係者だろうか。
「宮城県内で毎年ベスト8だ。毎年だぞ?それってどんだけスゲーか分かってんの?」
「…す、すみませんでした。…ほら、行こ!」
「う、うん」
こんな風に思ってくれてる男子もいたんだな。正直なところ、男バレにはいつも見下されてる感じがしてた。こんなヒソヒソ話、聞き流すことだってできたのに反論までしてくれるなんて嬉しさで胸がいっぱいになる。
「あーあ。ああいう噂好きな奴ってどこにでもいるよなぁ」
「あ、あの、ありがとう」
「ん?」
その時、初めて男の子がこちらを振り返って、正面から顔を見た。やっぱり記憶にない顔だなぁ…。
「あ!アンタ若利の…!」
「彼女じゃないです!」
…このくだりをするってことは男子バレー部員だな。私はそう確信した。
「え、違うの?俺は山形っていうんだ。よろしくな」
「緑川です…。あの、さっきは女バレを庇ってくれて…ありがとう」
「…。」
また牛島の彼女扱いされたことは恥ずかしかったけど、ちゃんとお礼を言っておいた。