第2章 気付き
「瀬見ね、ちょっと待ってて」
「ありがとう」
昼休み、私は瀬見くんがいる1組にやってきた。1組に来るのは初めてで少し緊張したから、入口近くの男の子に呼んできてもらうことにした。
「なつみちゃん!怪我はどう?」
「瀬見くん…」
相変わらずニカっとしたイイ笑顔でこっちに向かってきてくれた。絶対鷲匠先生に怒られたはずなのになぁ…。
「あの、瀬見くんごめんね。私の不注意なのにこんな騒ぎになると思ってなくて…」
「騒ぎ?あー…監督には怒られたけど、まーいつものことだしな。気にしないでよ」
「…瀬見くん絶対モテるねコレ…」
「モテ…?それより怪我平気か?まだ出血あるって聞いたんだけど。セッターに指先怪我させるなんて、同じセッターとして失格だな、俺」
目線を逸らし、気まずそうに瀬見くんが謝ってきた。私が同じポジションだから尚更申し訳ない気持ちにさせているのかもしれない。
「平気だよ。ここしばらくは練習試合もないし。インハイ予選メンバー選抜までに治せれば問題なし!」
「…なつみちゃん」
「あっれーーー?なつみちゃんと英太クン?なにしてんのォ?」
突然1組の教室に天童くんが現れた。全然気配がしないから分からなかった…。
「…ちょっとな。お前には関係ねぇよ。」
「ちょっと英太クン冷たくなーーい?なつみちゃんお昼食べた?まだなら皆で食べよーよ」
「私はまだだよ。瀬見くんは?」
「俺もまだ…」
「じゃあ決まりィーー!学食行こーーー!」
…天童くんの勢いに負けて3人で学食に向かうことになった。今日は重い荷物が持てなくてお弁当を持ってきていなかったから丁度良かったんだけど。
「はい、なつみちゃんはここで座って待っててネ。その手でトレー持つの危ないからサ。何にする?」
「あ、うん。えーと」
「俺のオススメはねぇ、唐揚げのA定かなぁ。サラダが量多くてネ、女子は絶対好きなはず~」
「…じゃあA定かな」
「おっけーーい」
嵐のように天童くんに注文を取られると、2人は食券機に並びに行ってしまった。でも、こういうふうに強引に親切にされるの、嫌いじゃないな。