第3章 一夜が明けて
「……!」
鬼灯様が、私に気づいたみたいだ。このままじゃ、誤解されちゃう……。
そう思っていると、白澤さんがふざけた調子で声を発した。
「あーあ、良いとこだったのに~。ひいろちゃんの言ってたのってお前かぁ。レイと会って遅れれば良かったのにな」
その言葉と同時に、私に回していた腕が放される。
「鬼灯様……」
見上げると、鬼灯様は少し怒ったような顔をしていた。
「視察は中止ですね。……行きますよ」
そう言って、鬼灯様が立ちすくんでいた私の手を引こうとした。
すると。
「待てよ」
白澤さんが、私のもう片方の手を引き寄せた。
鬼灯様が、わずかに怒りをはらんだ声で言う。
「何ですか?あなたには、女ならたくさんいるんでしょう?」
「だから何?これが僕の気の迷いだって思ってるの?」