第3章 一夜が明けて
第一、いつもすぐ放してくれる…はずだった。
「白澤、さん……?」
腕を回して、私をぎゅっと後ろから抱きしめたまま、白澤さんは動こうとしない。
「もう少しだけ、このままでいい?」
そう耳元に囁かれたのは、いつもとは違う、少し掠れた声で。
少しだけ、回された腕の力が強くなる。
急に白澤さんのコトを意識してしまって、鼓動が早くなる。今までこんなことなかったのに。
私の耳元に、首筋に、白澤さんの吐息を感じる。
「白、澤さんっ……」
動揺してなにか話そうとすると、また少し、白澤さんの抱きしめる力が強くなる。
これ以上動揺したら、私は……。
そう思った、次の瞬間。
ガラガラ。
「こんにちは。視察に来ました」
扉が空いて、鬼灯様の声がした。