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儚い君へ

第2章 桜の木の下で


遠くからみたよりも、その桜の木は大きく
たくましかった。

木は劣化し、長い長い年月をたてて育ってきたか見ても分かる

そっと触れるだけでも木がミシッと音をたて

今にも崩れてしまいそうだ

すごく、引き込まれる

初めて見る木なのに懐かしい感じ…

よく見ると木の端に小さく文字が刻まれていた。

「お、きた、そ、うじ…」

文字をゆっっくりとなぞるように、わたしは読み上げた

『おきたそうじ』ってたしか…新選組の…?

でも、なんでこんな所に彫ってあるのかな…

きっとなにかのいたずらに決まってる

わたしは桜の木を見つめ直し

もう一度だけ木に彫ってある名を読んだ

「沖田総司」


___すると

さっきまで蕾だけだった桜が満開になった

「え…まだ春じゃない…」

満開になった桜は綺麗に散りわたしの周りを勢いよく包み込んだ
淡いピンク色と、誰かに包み込まれたような感覚。そして落ち着く匂い…

そこで、わたしの意識はフッと細い糸が切れたように消えた。
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