第1章 平凡な生活
幾つかの隊舎を通り過ぎ、戻ってきた十三番隊隊舎。
十三番隊は隊長が非常に温厚なおかげで、何時も穏やかな空気が流れている。
十一番隊とは正反対のそこは今日も静かだ。
此処から先は朽木副隊長の後ろに着いて行き、隊主室となっている雨乾堂へ足を進める。
雨乾堂に近づくにつれて、浮竹隊長以外の霊圧を確認した。
恐らく、八番隊京楽隊長だ。
本当にこの二方は仲がいいようで、何かある度に2人で居る所を見かける。
「浮竹隊長、鎖深月を呼んで参りました。」
雨乾堂の障子の前で膝をつき、気迫のある声で中に居る此処の主に呼び掛ける。
すると直ぐに障子が開かれ、その中が見えた。
席官でもなく極普通の隊士が此処に来ることは殆ど無く、私もこれが初めてだ。
と云うよりが此処自体どうでもよい存在で、知ろうとさえ思わなかったが。
「おーす朽木。ありがとな。」
障子が開くと直ぐに見えた白く長い髪。
そう言えば浮竹隊長は白く長い髪だったな。
朽木副隊長と浮竹隊長が何かを話している間、頭の片隅でそっと呟いた。
「朽木、お前は少し席を外してくれ。」
何処かに飛んでいた私の意識は、浮竹隊長のそんな言葉で戻ってくる。
いつの間にか話は進んでいたそうで、朽木副隊長は去り際にニコッと可愛く笑って隊舎に戻って行った。
この場に残された私は隊長二人にジッと見られたまま、沈黙を迎えた。
立ったままだが、座る訳にもいかず雨乾堂近くに植えられた大きな松の木の観察を始めるのであった。
「そんな所に立っていないで、こっちへ座ったらどうだい?寒いだろう?」
沈黙を破ったのはほんわかした緩い声で、その声の主は部屋の奥に座っているだろう京楽隊長だ。
チラッとそちらに目を向け小さく息を吐き、部屋に足を入れる。
暖房が効いているのか微かに暖かいと感じた。
ピシャと音をたててしまった障子を横目に、用意された座布団の上に静かに座る。
それを合図として、浮竹隊長が言葉を発した。