第1章 平凡な生活
尸魂界 瀞霊廷 12月23日 午前11時25分
白銀の長い髪に鮮血を思わせる紅い瞳。
黒い死覇装に赤い帯を前で蝶結びで締めた少女。
名を、鎖深月狐珀(サミツキコハク)。
瀞霊廷 護廷十三隊十三番隊隊士だ。
残り2日でクリスマスがやって来る今日この頃。
現世の文化を取り入れつつある瀞霊廷では、皆浮かれ気分...らしい。
年末と云う事で忙しい時期であるが、まずはクリスマス、と現世で買ったツリーを飾る隊舎もあるそうだ。
私が隊士として入隊している十三番隊も隊舎前にツリーを飾っている。
「狐珀ーー!!」
今日も気紛れで散歩に出てきた私の後ろから、聞きなれた少女の声が聞こえた。
顔だけを動かして後ろを見ると、自分より頭1つ分小さい黒色の短い髪の少女が視界に映る。
少女の左腕には、副隊長だけが付ける副官証。
「何か用でしょうか。朽木副隊長。」
朽木ルキア副隊長。
四大貴族、朽木家の養子なんだそう。
こう見えて私の先輩だ。
そして何故か懐かれてしまった。
「お主を連れてくる様に言われたのだ!!」
途中から瞬歩を使ったらしく、瞬きをすれば朽木副隊長は私の目の前で仁王立ちをしていた。
どうやら少し怒っているらしいがその顔は実に可愛い笑顔だ。
「浮竹隊長でしょうか。...わかりました。」
顔を前に戻し小さく溜息を吐きながら答える。
呼び出される様な事をした覚えはない。
サボり気味だが、仕事はしている。
全く面倒だ。
私は1度朽木副隊長を見ると、来た道を戻る為に踵を返した。
何も言わず歩き出した私に待て!と叫ぶと、バタバタと足音を鳴らして走ってきた。
あぁ、憂鬱だ。