第2章 番号を背負わない隊長
コンコンと総隊長がいるであろう隊主室の扉を叩く。
直ぐに入れと声がかかり、扉を開いた。
入って右側の奥に総隊長がどしりと座っている。
そちらに軽く会釈をし、大きな木の机の前まで足を進めた。
「鎖深月隊長。何故に羽織を着ないのじゃ。」
そう言えば、すっかり忘れていた羽織の存在。
左手に持っている羽織をバサッと広げ、肩にかける。
「うむ、よく似合っておる。」
お褒めの言葉にありがとうございますと会釈をする。
総隊長は私に座るように促し、副隊長が持ってきた椅子にお礼を言い浅く座った。
「鎖深月隊長。いや、今は狐珀と呼ぼう。お主は何故隊長になったか、わかるか?」
唐突な質問だ。
分かっていたら此処まで苛つくことはないだろう。
私は首を小さく横に振った。
「儂等もじゃ。突然、中央四十六室より命が来ての。」
これだから権力者は嫌いなんだ。
自分の思い通りにならない者が現れると、監視しようと特別扱いをして鎖で繋ごうとする。
私の場合もそうなのだろう。
「申し訳ありません。」
目は総隊長に向けられたまま、小さな声で謝罪する。
それに驚いたように細い目を見開いた。
「お主が謝ることではない。...狐珀や、自信を持つのじゃ。お主はもう隊長じゃよ。」
何が嬉しくて隊長をしなければならないのか。
私は隊士のままで良かったのだ。
「...はい。」
そんな気持ちを押し殺して頷いた。
他にも回らなければならない隊があるからと、静かに椅子を立つ。
扉の方に向かって歩き、手前で軽く会釈をした。
「何か話したい事があれば、何時でも来て良い。」
扉を開けたとき聞こえたその言葉を拾い、もう一度会釈をして隊主室を出た。
もう、本当に面倒だ。