第4章 内川の誓い
「聖様、内川(うちかわ)まで到達致しましたよ。あともう少しですね」
津軽海峡の決戦では、第一陣の会津軍が蝦夷島に上陸し、これに第二陣の星川軍が続き、更に第三陣として、事実上の「十三宮軍」である津島三河も合流しつつあるはずだ。一方、私と姉さんは、やたら頼りになる須崎司祭に導かれ、見覚えのある場所に辿り着いた。ここは確か、あの邪馬台国事件の日に、姉さん達と出逢った場所である。あの頃が良い時代だったとは思わないが、皆が生きていた。後に権力の闇に呑み込まれた勇姉さんも、まだ学生だった。そして、私の隣には、今は亡き仁さんも…。
「お帰り!あれ、『ただいま』って言うのが正しいかな?」
え…?
「め…仁!」
「仁様?御無事だったのですね!」
仁さん…いや、そんなはずはない!彼女は行方不明になった後、確かに「死亡」と発表された。死んだ仁さんに逢えるという事は、私達も死んだのか?対小惑星隕石砲が着弾して、その炸裂で私は…。
「何を戸惑っている?早く仁さんを保護して、脱出せよ!」
寿能城代の怒声で、すぐ現実に引き戻された。平和島に残った後も、区内の監視カメラと通信網を駆使し、御丁寧に見守っている上に、口出しまでしてくれるようだ。
「心配掛けちゃって、ごめんね…でも、約束は忘れないよ。私達はずっと一緒だもん!あなたの隣には、いつも私が…」
仁さん、ありがとう…!言葉を言い終わる頃には、互いを強く抱き締め合っていた。この上は、皆で生き残る以外に道はない!
「…はい!皆で生還しましょう、最後まで!」
「では聖様、例のを実験しますか?」
「姉様・ガラシヤ様、どうするの?」
一行に帰参した仁さんの問いに、須崎司祭が先に答えた。
「あれの中身が放射線であれ神経ガスであれ、こういう情況では、年少の方を優先的に保護するのが原則です。加えて、例え迎撃に成功しても、高々度での核爆発に伴う電磁パルスが発生し、社会資本の破壊と、甚大な混乱が予想されます。何らかのシェルターが必要ですね」
「また、顕ちゃんに編んで貰った資料を、確実に保存せねばなりません。そこで、前にもお話し致しましたが、お二人は一時的に、宝石の中に退避して頂こうと思います。その際、お持ちの『無題文書』も御一緒に!」