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【YOI】ほろ苦く、そして甘い予感【男主&ユーリ】

第1章 挫折と再会


「とにかく、2人共怪我がなくて良かったわ。礼之くんは、一先ずホテルに戻って休み。それも選手の仕事やで。明日のEXには君も招待されとるんやから。ユリオくんは?」
「俺もホテルに部屋取ってるから、心配しなくていいぜ」
純に問われたユーリは、思い出したように靴紐を結び直しつつ答える。
「…じゃあ僕、そろそろ行きます。勝生さんも、また明日よろしくお願いします」
「うん、またね礼之くん」
立ち上がって一礼した礼之を、ユーリは何故か少々名残惜しそうに眺める。
「プリセツキーさんは、いつまでこちらに滞在してるんですか?」
「え?ああ、明後日の便でロシアに戻る予定だけど」
「良かった。勝生さんだけじゃなくて、僕のEXも見て貰えるんだ」
「こ、こないだのロシア大会でも見たじゃねぇかよ」
北米の振付師に依頼したという、タップダンス調のコミカルな礼之のEXを思い出しながら、ユーリは言い返す。
「あれは、一緒に出演してた形ですから。貴方に客席から観て貰えるなんて、とても光栄です」
素直な礼之の言葉を聞いて、ユーリは柄にもなく胸を躍らせた。
そう言ってユーリに背を向けた礼之だったが、数歩進んだ所でふと何かを思い出したように振り返った。
ボソボソとした声が聞き取れないユーリは、礼之に近寄る。
「何だよ」
「…僕、別にイヤじゃなかったから」
「あ?」
「貴方とキスした事」
耳元で吐息混じりに続けられた囁きにフリーズしているユーリにもう一度だけ頭を下げた礼之は、今度こそ皆の前から立ち去る。
完全に礼之の姿が消えた瞬間、ユーリはその場で頭を抱えると、
「だから、オメェは何処まで真っ直ぐなんだよコンチキショー!」と魂の底から絶叫していた。

礼之はコーチと軽い食事を取った後で、東京の家族に連絡を済ませると、ホテルのベッドの上で寝転がりながら音楽を聴いていた。
ヘッドホンから流れるレトロポップ調の洋楽の歌詞を口ずさみつつ、人差し指で己の唇をなぞる。
思わぬ形での初めてのキスと、その相手。
自分は今、どのような想いをあの人に抱えているのだろうか。
「この想いは、きっと言葉だけじゃ上手く伝えられない…」
そうひとり愚痴ると、礼之はスマホからとある人物に電話をかけた。
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