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【YOI】ほろ苦く、そして甘い予感【男主&ユーリ】

第1章 挫折と再会


再び黙り込んでしまった礼之を、ユーリは些か気まずそうに見つめる。
そして、脳裏に自分が初めてキスをした時の事を反芻させていた。
成長期による不振に喘いでいた頃、さり気なく手を差し伸べて来たその人に、ユーリはリンクで様々な想いを込めてキスをした。
それは、その人に対する明確な気持ちを自覚すると同時に、それまで密かに抱いていた淡い恋心のようなものが、完全に消失した瞬間でもあったのだ。
そのような経緯を持つ自分と、ひょんなアクシデントで初めてのキスをしてしまった礼之では比べようがないのだが、何とか彼を元気づける事は出来ないものかと考えていると、背後から声が響いた。
「あ、ユリオ。礼之くんも」
「ぅひっ!?」
「礼之くん、どないしたん?そんな赤ぅなって」
ある意味今一番会いたくなかった人物に声を掛けられて、ユーリは僅かに慌てた。
「ユリオー、幾らライバルになりそうなコだからって、リンク外でプレッシャーかけたりイジメちゃダメじゃないか」
「イジメてねーよ!ただ、ちょっとしたアクシデントがあって、その…」
「そうなん?」
純に訊かれた礼之は、やがてボソボソと口を開く。
「ワザとじゃないのは判ってるんです」
「…おぅ」
「僕もプリセツキーさんも怪我してないのは、本当に良かったです。仰る通りの事故だし、僕も特別女の子のような憧れを抱いてた訳でもありません。ただ…」
「?」
「僕のファーストキスは、ホットチョコレートの味なのかって…甘いのに妙に現実的だったから、何とも言えない気分になってしまって…」
「あぁ!?」
心配していただけに、続けられた礼之の言葉を聞いたユーリは理不尽な怒りが湧いてきた。
「ホッチョコならまだいいじゃねぇかよ!俺なんかファーストキスの時、ボルシチの味したぞ!」
「…随分、アットホームなキスだったんですね。歳上の方とですか?」
「え?あ、ま、まぁな…」
言葉を濁しながら、ユーリは少しだけ困ったような視線を背後にやる。
そんなユーリの視線に気付いた勇利は、僅かに表情を変えたが、直後ヴィクトルから思い切り抓られて悲鳴を上げた。
「痛ーっ!何するんだよ、ヴィクトル!」
「別に」
背後のやり取りに、ユーリは決まり悪い表情をすると手を顔に当てた。
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