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【YOI】ほろ苦く、そして甘い予感【男主&ユーリ】

第1章 挫折と再会


「ユリオくん、礼之くんと一緒に休憩所におるって」
スマホのメッセージを確かめながら、純が勇利とヴィクトルを見る。
「あの2人、この間のロシア大会で親しくなったみたいだね」
「ヤコフも『サムライ』くんの事は、ちょっと気にしてたよ。歳も実力も近いから、ユリオの良いライバルになりそうだって」
「ほんなら僕、ちょっと礼之くん達の所へ行ってくるわ」
「俺も行こうかな。久々にユリオをからかって遊びたいし」
「また、ヴィクトルはそういう事を…」
「『デコ』はともかく、勇利はスモールメダルや取材は終わったん?」
「この俺が、勇利のスケジュールを把握してない訳ないだろ?」
「そやし、僕は心配やねん」
そんな小競り合いを続けながら、3人は休憩室に向かって歩き出した。

2人分の体重を載せたソファが、ギシリと音を立てる。
ユーリの緑がかった瞳が、驚愕その他の理由で見開かれた礼之のそれを見下ろしていた。
(俺とは違う青い瞳…コイツのあだ名の通り…じゃねぇ!)
「わっ、待って!」
弾かれたように身を起こそうとしたユーリだったが、自分の身体の下にいる礼之から声を掛けられる間もなく、再びバランスを崩した。
あまりスプリングの利いていないソファに顔を打つかという寸前、伸ばされた礼之の腕が、ユーリの身体を抱き留める。
結果、再び至近距離で見つめ合う形になったが、1度目とは異なり、互いの身体その他が密着までには至らなかった。
やがて、仄かに頬を紅潮させた礼之が、ゆっくりと体勢を起こしてユーリの身体を自分から優しく引き離す。
顔を背けて口元に手を当てたまま俯いた礼之に、ユーリも無意識に自分の唇に触れた。
ほんの数秒の出来事だったが、あの時2人でソファに引っくり返ったはずみで触れ合ったのは、間違いなく。
「あの…よ、」
「プリセツキーさん、お怪我は?」
「あ?ああ、大丈夫だ。お前は?」
「平気です。けど…」
言葉を切った礼之の顔が、益々赤くなっていくのを見たユーリは、努めて声を張り上げた。
「き、気にすんなって!お前はコケそうになった俺を支えようとしただけだろ!?だからワザとじゃねぇし、コレは事故だ!忘れろ!俺も忘れるから!」
「…無理です」
「あぁ!?」
「だって…僕、初めてだったから」
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