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【YOI】ほろ苦く、そして甘い予感【男主&ユーリ】

第3章 再会と甘い予感


【エピローグ】

コーチから休憩を言われた礼之は、携帯してきたボトルを傾けながら汗を拭く。
世界選手権に向けての最終調整もあり、コーチの指導も日毎に厳しさと精密さを増してきた。
自宅の広尾から拠点のリンクまで近いので、礼之は悪天候の日を除いてロードバイクで通っている。
昔からサイクリングはお菓子作りと同じくらい好きなので、礼之は日本に帰国してからというもの、ロードワークも兼ねて都内のあちこちを愛車で見て回っていた。
そこでお気に入りの店やカフェを発掘するのだが、最近ではそれに加えて新たな楽しみも増えてきた。
(いつか『ユリ』が東京に来た時に、色々案内したいな。それまでに東京の公道もタンデム自転車OKにしてくれるといいんだけど。それとも、ユリはオートバイや車の方が好きなのかな…?)
そんな事を考えながら、礼之は荷物の中から昨年のGPS日本大会後にユーリに渡したものと同じキスチョコの箱を取り出すと、1つ口にする。
今では大分数が減っているが、礼之はそれを大事に食べていた。
双子の妹に「ケチ」と言われても、このキスチョコだけは家族の誰にも上げず独り占めを貫いていたのだ。
口に含む度、礼之の舌と脳裏にはあの甘やかな記憶が蘇る。
「君も同じ気持ちだといいな」
そう呟いた礼之は、再びコーチから声を掛けられ元気良く返事をした。

「食うな!それは俺のだ!」
「何よ、1個位いいじゃないケチ!」
自分の荷物に紛れて鎮座するチョコレートの箱を手に取るミラを認めたユーリは、声を荒げてそれを制止した。
半ば引ったくるように奪い返すと、悪態をつくミラに構わず手の中のそれを見つめる。
昨年末のロシアナショナルで自分がユーロとワールドの出場を決めたのと同じく、礼之も宣言通りジャパンナショナルで勝生勇利に次ぐ2位の成績を収め、ワールドの出場権を獲得していた。
『お互い食べ終える頃には、ワールドで会ってるかも知れないね。だから、それまでに…』
「…これはただの糖分補給だ!」
最早何度唱えたか判らない言葉を呪文のように呟くと、ユーリは残り少なくなってきたチョコを1つ食べる。
途端に口中に広がる甘さと彼との記憶が、ユーリの中をじんわりと浸透していった。
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