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【YOI】ほろ苦く、そして甘い予感【男主&ユーリ】

第1章 挫折と再会


既に勇利よりひと足先にGPF進出を決めていたユーリは、それを条件に大会と出場するライバル達の視察にかこつけた日本行きの約束を、半ば無理矢理コーチのヤコフと取り付けていた。
単純に日本に行きたいのと、勇利の演技を直に観たかったのも理由の1つだが、何より先日のロシア大会で再戦を約束した『青い瞳のサムライ』の事が気になったのもあったからだ。
SPでのミスが響き、結果は残念なものとなったが、ユーリは最後の最後まで諦めなかった礼之の演技に、かつての自分を思い出しながらも好意的な視線を送っていたのだった。

「ごめんなさい。僕、貴方との約束守れなかった…」
休憩所に移動した礼之は、備え付けの自販機でホットチョコレートを購入したユーリが、自分の隣に腰掛けたのを認めると、力なく謝罪の言葉を呟いた。
「…バーカ。ファイナル逃した位で、何この世の終わりみてぇなツラしてんだよ」
「え?」
「お前は最後まで強気で攻める事を忘れなかった。結果は仕方ねぇけど、弱気で逃げるよりかは全然良かったぞ」
「プリセツキーさん…」
「それに、未だシーズンは終わってねぇ。ワールドでもう一度、だ。前回もカツ丼が気合い入れまくったから、日本の枠増えただろ?ジャパンナショナルで今度こそ出場権勝ち取れよ」
「…はい!」
漸く笑顔を見せて頷いた礼之に、ユーリもホットチョコレートの入った紙コップを傾けると、口角を綻ばせた。

「純」
「あ、勇利。優勝おめでとう。ところで礼之くん見いひんかった?」
「礼之くん?さあ、僕は…」
コーチと分かれた後、単身礼之を探していた振付師の藤枝純は、途中で取材その他を済ませた勇利とヴィクトルに遭遇した。
「そういえば、さっきユリオが誰かを探してるみたいに通路歩いてたっけ」
「え、今ユリオくんもこっち来てるん?」
ヴィクトルの言葉を聞いて、純は目を丸くさせる。
「何でも本人曰く『勘違いすんなよ、ヤコフの使いのついでだ!』らしいけど…どうだか」
かつてユーリが自分の愛しい男のスケートだけでなく、本人にも淡い想いを抱いていた経緯を知るヴィクトルは、少しだけ不機嫌そうに返事をした。
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