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【YOI】ほろ苦く、そして甘い予感【男主&ユーリ】

第2章 僕と貴方の唇は


フィンランドには、日本人からは一見女性のような男性名があり、『ユリ』もその1つである。
「…んな呼ばれ方、初めてだ」
「じゃあ、僕だけの特別だね」
嬉しそうに笑う礼之を苦々しく思いながら、それでも拒絶までに至らない自分をユーリは何処か滑稽に感じていた。
「ちなみに、君は僕をこれから何て呼んでくれる?」
「あ?『サムライ』でいいだろうが!」
「自分はやめろって言っときながら、それはズルくない?」
不満げにこちらを見ている礼之に、ユーリは眉間に皺を寄せる。
「エロ侍以外なら良いよ。ロシア風に呼ばれるのもOK」
「いいのかよ?」
「だって『ユリ』が、僕を呼ぶ為のものでしょ」
早速愛称でユーリを呼んだ礼之に、ユーリは何とも言えぬ顔をする。
「あー…確かお前、ミドルネームもあったよな」
「アレクシス。南さんも、それで僕を呼んでくれる」
「じゃあ、ロシア読みだとアレクセイか…?」
脳裏に対応するあだ名を思い浮かべていたユーリだったが、はたとこちらを見てニヤついている礼之の表情に気付くと、途端に眉を顰めた。
「…やめた」
「どうして?」
「うっせぇ!第一、お前には礼之って名前があんだから、それでいいだろ!」
喚くような返事に、礼之の顔が明るく輝いた。
「うん!僕は日本のスケーター、伊原礼之だ!ユリがそう呼んでくれるのは、一番嬉しいかも!」
「ったく、ホント調子狂うぜ…」
片手で頭をかくユーリだったが、不意に鼻が痒くなりくしゃみをした。
「大丈夫?」
「平気だ」
「少し冷えちゃってるね。ゴメン、そろそろ戻ろう」
ユーリの手の温もりを確かめるように握り締めた礼之は、ポケットから小さなポーチを取り出すと、それをマフラー状に拡げてからユーリの首に巻き付けた。
「この携帯マフラー、妹が作ってくれたんだ」と少しだけ自慢げに話した後で、ユーリの身体をもう一度だけ抱き寄せながら、耳元に唇を寄せる。
「ねえ、ユリ。後で君の…」
低音の囁きに、ユーリは瞬時に身を竦ませる。
「ダ、ダメだ!お前未だ高校生だろう?俺の部屋になんて連れてけねえからな!」
「え?アドレス交換しようと思ったんだけど…ダメなの?」
スマホを手に目を丸くさせている礼之に、ユーリは全身を赤くさせたまま脱力した。
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