第2章 私の夢はあなた次第
私の夢は、とても人並みで《心から愛した人と結ばれること》
ようはお嫁さん。
目の前で華麗にフライパンを振るう彼の夢はとても大きくロマンが溢れたこの世のどこかにあると言われている《伝説のオールブルーを見つけること》
彼とは正反対の現実的な夢を抱く私だが、そんな彼に私はずっと恋心を抱いている。私は私なりにアプローチをしてきたつもりなんだけど多分気づいてないよねぇ。
「ねぇねぇ、サンジくん」
「ん?なんだい、ななしちゃん」
オープンキッチンの中でお昼ごはんを作るサンジくんのカウンター越しに座り、頬杖をついてペラペラと雑誌をめくる手を止めて話しかければ、ちらっと私の目を見て返事をしてくれる。けれどその視線はすぐにフライパンの中でサンジくんの手によって楽しそうに踊るピラフへと注がれる。今日は私とサンジくん以外はみんな船を降りて街へ繰り出している。
「サンジくんの夢はオールブルーを見つけることだったよね?」
「あァ、そうだよ」
「じゃあ、私の夢って…知ってる?」
「ななしちゃんの夢?」
「そう!私の一番の夢」
仲間にいれてもらった本当に初めの頃に、一度だけ話した事があるのをサンジくんは覚えてくれているかな。
私がじっと見つめると、今度はフライパンを熱していた火を止めてちゃんと私と見つめてくれる。そして咥えていた煙草を手で持ち、顔を私がいない左側に向けて煙を吐き出した。白い煙は私の方へ来る事はなく、ふっと換気扇に吸い込まれていく。