第2章 私の夢はあなた次第
「覚えてるよ」
「ほんと?言ってみて!」
「んーいや、それはまだ言えねェな」
「え、なんで?!」
ガタンと音を立てて立ち上がり、サンジくんへとカウンター越しに詰め寄ると同時に、私に煙が当たらないように自然な流れで素早く煙草の火を消すと、サンジくんがニッと口角を上げてわった。
「だって、まだ ななしちゃんから本気で愛してもらってねェからさ」
「そんな!ちゃんと愛してるもん!……あ」
売り言葉に買い言葉な感じで自分が発した言葉にハッとする。バッと口に手を当ててサンジくんの様子を伺う様に顔を上げると嬉しそうにニヤけながら私を見ていた。普段のサンジくんからは想像もしない、いたずらっ子の様な表情にドキドキする。
サンジくんが私の気持ちに気付くまで言わないつもりだったのに…むしろサンジくんから言ってくるのを待っていたのに…。
「…もしかして言わせた?」
「言わせたつもりはねェけど?」
「今の絶対誘導したでしょ?」
「いやァ〜 ななしちゃんがまさかそんな風に思ってくれてるとなァ?」
ニヤニヤと頬を緩ませながら私を見るサンジくんをギロリと睨みつけると、サンジくんはズボンのポケットに手を入れてカウンターから出てきた。そしておいでとダイニングの椅子へ座るように手招きしたので大人しくそれに従い、隣に腰を下ろすと手のひらを差し出される。
「なぁに?」
「手の平が上になる様にここに置いて」
「?はい…」
よくわからず言われた通りに手を置くとさっきポケットに入れた手を出し何かを私の手のひらへと優しく置いた。
「え、これ…」
その何かに重ねられていた手が離れ、姿を現したのは小さな箱。箱には、今まさに見ていた雑誌に載っていたブランドの文字が書いてあった。見間違いかと驚いた私はサンジくんと箱を交互に見ると、サンジくんが椅子から降りてゆっくり跪き、私に見える様にその箱を開けた。
「 ななしちゃんの夢はこれだろう?」
箱の中に入っていた物、それはキラキラと輝く大きくも小さくもないハートの形のダイヤがついた指輪だった。その指輪はいつかプロポーズされる時に欲しいと誰にも言わず密かに思っていた物でさらに驚いた。