第1章 Please see only me.
私を見つめる視線から逃げるようにもう一口だけレモンティーを飲んで冷めないように蓋をきつく締める。湯気を閉じ込めるように自分の気持ちも心の中に閉じ込めたくて。
私だけを見て欲しいのは本心だけど、サンジくんの性格を否定したくないし、縛りつけたくない。ただ心配なだけ。今のところ、サンジくんがお姉さんに目をハートにさせても相手が見向きもしないから大丈夫だったけど、いつか相手がそれに応えてしまったら?私はどうなるの?そう考えると心配で不安で仕方がない。
「本当に…」
「え?」
小さく声が聞こえてそちらを見ればサンジくんが自分の手で目を覆っていた。何かダメだったのかな?
「サンジくん?どうしたの?」
そう恐る恐る声をかけると同時に何かにぶつかった。どうやら抱き寄せられたみたいで、頬にサンジくんの胸が当たる。サンジくんの顔を見ようと慌てて少し離れようとするも、ぎゅっとさらに強く腕に力が入りそれは叶わない。
「サ、サンジくん」
「好きだよ」
「え?」
「ななしちゃんが好きなんだ」
「えと、私もサンジくんが好きだよ」
力が緩むことはなくより一層強くなるばかりの腕から逃げるのは諦めて目の前の胸に頬を寄せると、ドクドクと早い鼓動が伝わる。これが私のものなのか、それともサンジくんのものなのかはわからないけれど、私の心臓は伝わる鼓動と同じ様に動き続ける。
「好きだからななしちゃんに悲しい思いはさせたくねェんだけどな…」
「いいよ、サンジくんのこと信じてるもん」
「でも私だけを見て、だろ?」
「う、うん…」
「他のレディを見て盛り上がっちまうけど、おれが本当に守りてェって思うのも、これからもずっと一緒いてェって思うのも、ななしちゃんだけだよ」