第1章 Please see only me.
サンジくんと心を通わせてから思っていることがある。
それはサンジくんが女の子を見たら私がいるのにもかかわらず目をハートにさせること。
これはサンジくんの性格だから仕方ないと出会った頃から分かりきっていたはずなのに、どうも最近よく思わない自分がいる。
不寝番の為、見張り台に登り月夜に揺らぐ海を見ながら眉間に皺を寄せる。春になったけどやはり夜はまだ肌寒い。ぶるっと身震いしながら持ってきた毛布を羽織る。
「サンジくんのばか…」
昼間の綺麗なお姉さんに目をハートにさせて擦り寄る姿を思い出してまた一層眉間に皺が寄る。サンジくんが世界中全ての女性を好きなのも、誰よりも大切にしているのは私がよく知っている。でも、嫌だ。嫌なの。
「私だけ見てよ…」
「見てるよ」
「えっ?!」
誰もいないはずの見張り台から声が聞こえて周りをキョロキョロするとひょこっと下からサンジくんが顔を覗かせた。
「びっくりしたぁ〜…」
「驚かせてごめんな、寒くねェかと思ってさ」
軽やかに見張り台へ降り立つとボトルを私に手渡して、隣へと腰を下ろす。羽織っていた毛布を取り、サンジくんの膝にもかけてあげると頭を撫でられた。嬉しくなり照れ笑いしながらボトルの蓋を開けると、ふわっと白く温かい湯気が立ち上り、レモンと紅茶の香りが広まったかと思えばそれはすぐに潮風に流されて消えていった。
「ありがとう、サンジくん」
「どういたしまして、プリンセス」
目を細めて笑いかけてくれるサンジくんがあまりもかっこよくて私はつい目を逸らして小さくいただきますと言うと、温かいレモンティーを一口飲んだ。思ったより身体が冷えていたようで温かいものが身体の中を通るのがわかった。この感覚はいつになっても慣れないけど生きているんだなと実感する。
「やっぱすごく美味しい」
「そりゃァ、よかった」
「サンジくんが作るものは全部美味しいから好き」
「そう言ってくれるのはななしちゃんだけだぜ」
「えーそれは嘘だよ」
疑いの目をサンジくんに向けると少し困ったようにチャームポイントのぐるぐるの眉をハの字に下げて私を見た。
「やっぱり気にしてる?」
「ん、何が?」
「おれが他の女の子を見ると我を忘れて盛り上がっちまうところ」
「…それがサンジくんだから大丈夫だよ」