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恋に落ちる瞬間は(仮)[ONE PIECE/サンジ]

第2章 湯気の向こう側




誰も使っていない空き部屋に毛布がないことを思い出し、毛布と飲み物を手に空き部屋へと来た俺は、扉の向こうから小さな声だが大きく心の中を整理する為の深呼吸のようなため息が聞こえノックをしようとしていた手を止めた。この扉の向こう側にいる彼女は今何を思っているだろうか。ルフィに自分の店を壊されたのにも関わらず、落胆などしておらずむしろどこかホッとしているような気がしてならない。それに彼女も海賊だったと言う。普通の女の子かと思ったが何だか気になる…。何だこの感じは。


「………」


一人にした方が良いのかと考えるが、せっかく彼女の為に用意したホットミルクが冷めてしまう。心の中でよしと自分を鼓舞しながら出来るだけ優しく扉を2度ノックしてみれば、バタバタッと聞こえゆっくりと扉が開かれた。彼女がひょこっと顔を覗かせると、先程まで綺麗に編み込まれていた艶やかな栗色の髪が解かれており、はらりと肩から胸へと落ちた。そしてこんな夜分遅くレディの部屋に入るのは少々気が引けたが中へと通してもらう。久しぶりに入る空き部屋は埃っぽいが、かすかにバニラの良い香りが広がっていた。きっと彼女の匂いなのだろう。冷えるからと自分の毛布を差し出すと、それが俺のだと瞬時に気付いた彼女が遠慮がちに首を横に振った。でもレディの身体を冷やすわけにはいかない。少し強引に毛布を手渡すと彼女はふわりと笑い頭を下げた。


「………っ」


どこか照れ臭そうに笑う彼女の笑顔に一瞬心臓が跳ねた。いや、跳ねたというより何かに掴まれた感じがした。心臓がこんなにも大きくドクドクと動くなんて生まれてこの方初めてだ。どうかしたのか俺は……。

自分の異変を不思議に思いながらもサイドテーブルに置いてあったホットミルクを1つ渡し、彼女が一口飲んだのを確認してから俺もゆっくりと口に含んだ。途中、彼女の方から視線感じそちらを見ればふいっと顔を逸らされてしまった。何か言いたいことがあるのかと頭を回転させたが分からず、とりあえず今俺が言いたいことを口にする事にした。


「店、すまなかった」

「え?」


彼女がその店に対してどんな感情を持っていても、俺が壊した訳じゃなくても、謝って許される事ではないのは確かだ。俺は、いつの間にかこの目の前にいる彼女の本心が知りたいと思うようになっていた。

君のことがもっと知りたい。









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