恋に落ちる瞬間は(仮)[ONE PIECE/サンジ]
第1章 貴方と出会った、その刹那
「…ったく、大丈夫かい?お嬢さん」
耳元に心地よい低い声が落ちてきて、引き寄せられた肩をびくりと震わせながらおずおずと顔を上げると、夜風に揺れる綺麗な金髪とそこから覗く優しくもどこか力強い瞳が私を見ていた。
「あ……」
その瞬間、ドクンと大きく跳ね上がった心臓が先程よりも早く鼓動を刻み始め、私の思考の邪魔をする。何も考えられず思うように言葉が出ない…。
「お嬢さん?」
金髪から覗く右目から目がそらせずに、魚のように口をただぱくぱくさせている私を、彼は不思議そうにぐるぐるの眉をくいっと動かしながら見つめた。
「あ、あの…ありがとう、ございました…」
自分でもわかるくらいに顔を赤くさせつつ私は小さくお礼を言い、手で顔を覆った。こんな真っ赤な顔を彼に見せられないし、これ以上彼の目を見ていられなかった。
「怪我はないかい?」
「ありません…」
それよりも、と右肩に置かれたままの手を離してもらい、私は彼から少し距離を取った。あのまま触れられ続けていたら私はきっと溶けてしまっていただろう。
そしてハッと、今自分が置かれた状況を思い出す。
「あ、お店…」
「ここは…お嬢さんの店か?」
「はい、ここで酒場をやっていました」
スーツのポケットに手をいれながら彼も辺りを見回す。
「サ、サンジ〜…」
よろよろとふらつきつつ、さっきの麦わら帽子の人が右頬を腫らしながら戻ってくるのが見え、私は思わずスーツの人の後ろに隠れた。
「ルフィ!お前一体何したんだ」
「んぁ?あ〜…店壊したかも」
「はぁ?!お前…ッ」
なんてことを…と頭を抱えながらスーツの人が麦わら帽子の人の首根っこを掴んで私の前に差し出した。
「サ、サンジ?」
「お前が壊したのは彼女の店だ!謝れこのバカ野郎!」
「え!お前の?!それはすまん!」
首根っこを掴まれたまま頭を下げて謝る麦わら帽子の人をあたしはただ見つめた。
「どうしてこんなことを…?」
「悪気はなかった!」
「お前じゃ話になんねェ!すっこんでろ!あァ…っと俺たちは海賊なんだ、それで海軍との応戦中にこいつが飛んでいっちまってお嬢さんの店を…」
麦わら帽子の人を一喝するとスーツの人が代わりに答える。
「海賊…?」
「そう、俺たちは海賊」