第2章 ♡はじまり
どうせ捨てようと思っていた命だし、
博打ではあるが
この好意(?)に甘えてみるのも
いいかもしれない......
考えがまとまり、めるは
ばっと頭をあげる。
「お、お願いしても、宜しいでしょうか...」
その答えに、男は
フッと笑みをこぼす。
『ああ。もちろん。』
「あ、ありがとうございます!!」
『早速だが、お前名前はなんというんだ?』
「ふ、藤宮める、といいます。」
『める...か。承知した。
俺の名前は時環月臣。
この家、時環家の長男だ。』
「月、臣...様?」
『...それも悪くはないが、
お前はメイドだ。
俺のことはご主人様と呼べ。いいな?』
「はっ、はい!」
『この家には俺の他に
次男の雪臣、三男の花臣、
それから沢山のメイドや執事がいる。
雪臣は性格的にお前には大して関わってこないだろうから
それほど気にする事はないが、花臣は......まぁ、気をつけろよ。』
「...?はい...?
あ、お父様やお母様は
このお家にはいらっしゃらないんですか?」
『ああ。2人は別宅に住んでいる。
なにかと仕事で忙しいからな。』
「そうなんですね。わかりました。」
『あー...それから、1つ忘れていた。
お前、家族は?』
「あ...ぜ、絶縁状態なので...」
『じゃあ、友達』
「友達も...いない、というか...その...」
『...じゃあ、急にお前と
連絡が取れなくなった、などと
気にしそうな人物は?』
「......仕事もついこの間
やめちゃったので...
......いません、ね」
『......そうか』
「すみません」
『?...なんで謝るんだ?』
「あ、いえ...」
『よくわからんが、お前のそういうところは
あまり好きじゃない。
過去になにがあったか知らんが、
びくびくして謝って、意味がわからん。
もう少しプラスの感情も持て。
俺が愛想をつかせばまた前の生活に戻る。
お前は、俺の望むお前である必要がある。
意味、わかるな?』
「はい...
前向き...で、います。」
『ああ』