第2章 ♡はじまり
『本当に意味がわからん......
お礼はもういい。俺の質問に早く答えろ。』
「あ、えっと、ですね、
実はその、飛び込み自殺をしたわけではなく...
あ、といっても死のうかなとは
思っていたのですが、
あの事故はぼーっとしていただけの
ただの事故で......」
『はぁ?...ますますわからん...
本当になんなんだお前...』
「と、とにかく!
あれは自殺ではなく
私の不注意による事故、です!
本当に申し訳ありませんでした...」
深々と頭を下げる。
『はぁ...よくわからんが、まぁ、いい。
だが、この俺に迷惑をかけた挙げ句
助けてまでもらい、
このまま何もせず帰るつもりはないよな?』
下げた頭の上から冷たい声が聞こえてきて
またびくりと身体を震わせる。
「あ...えっと...」
『さて、何で返す?』
「......その、言い難いのですが...
お金は...ほとんどなく...」
『ふーん...で?』
「......えっと...
とにかく、貧乏な、もので...
お金に関わらないもの、なら...」
『なんでもいいのか?』
「は、はい...
私に可能なこと、なら...
その、もう...」
『ん?』
「どうせ死のうとも思っていましたし、
私に出来ることなら、もう、なんでも、大丈夫です。
例えば、本当に例えばそれが命でも......
別に...しょうがないかなって、思う程度には...
なんて...」
これはもしかして、神様が与えてくれた
私の不幸な人生を終わらせるチャンスなのかも...
そんなことを思って
複雑な心境に困ったように笑う。
『.........お前...』
何かを言おうとして
すっと押し黙る。
「...?」
『......いや、なんでもない。
本当に、なんでもいいんだな?』
「はい。」
『それなら......そうだな...
うちでメイドとして雇われてみないか?』