第2章 ♡はじまり
「あ、ありがとうございます...!」
『......』
彼はふいっと顔をそむけると、
そのまま歩き出す。
「あ、あの...
私、藤宮 めるっていいます。
今日からこちらでメイドとして
働かせて頂くことになりました。」
『...そう』
「よろしくお願い致します。」
『......』
彼はこちらにちらりとも目もくれず、
もちろん言葉も発しない。
あまり話しかけない方がいいと判断し、
めるもこれ以上何も言わず
黙ってついて行くことにした。
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「あ...!」
見慣れた部屋の扉が見えて、
めるは思わず声をあげる。
『...もう平気?』
「はいっ!
本当に、ありがとうございました...!」
『......うん』
彼はくるっと方向を変え、
そのまま戻った道を行く。
(とても無口な方だったけど、
でも、ちゃんとここに連れてきてくれて...
優しい方だったな…)
めるはほっとしたように息をつき
扉を開け、部屋の中に入った。