• テキストサイズ

短・中編集

第2章 曇天のち晴天[安倍蒼世]


兄・天火が当時抱えていた悩み。身内に本当に大蛇が出た時、私は相手を斬ることが出来るのか。
紀子だったら?天火だったら?宙太郎だったら?――蒼世だったら…?
今回、最終的に空丸が自分の"心の闇"であった大蛇と戦いそして勝利した。…私には、斬れなかった。
弱すぎたのだ。意思も、覚悟も。そして想いさえも。
「風邪をひいても知らんぞ」
いつの間にか近くに来ていた聞き慣れた声にそちらを見やる。
「そー、ちゃん…?」
「その呼び方どうにかならんのか」
「もう癖になっちゃったから無理かなー」
「…そうか。お前に話がある」
「んー?」
「明日を以て、俺…安倍蒼世専属のくの一を解任する」
「ぇ…?」
突然告げられた衝撃のひと言。たしかに、もう大蛇という脅威は去ったのだから必要ないのかもしれない。しかしあまりにも突然すぎる。
「そーちゃ…蒼世様…?私はまだまだ戦えます!確かに片腕は失いましたが、それでも私はまだ…!!」
視界が滲んでくる。こんなにも早く彼に突き放されるとは思わなかった。まだ彼と共にいたい、そんな想いが強くなる。
「義手を付けているといえども隻腕となったくの一を戦力外とするのは解ります!これも私の我儘と理解しています!ですが…ですがどうか、今1度私に機会を…」
「待て雪音。話は最後まで聞け」
涙を流しながら訴える雪音を遮り蒼世が先程の話を続ける。
「専属くの一は解任する。だが、お前にはまだまだ俺とともにこれからを歩んでほしい」
「それは…どういう…」
先程の解任するという話があまりに衝撃的すぎて理解が追いつかない。
すると、蒼世は雪音の涙を拭ってやりながら真剣な表情で告げた。
「――俺の…安倍蒼世の妻になってほしい」
/ 91ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp