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第2章 曇天のち晴天[安倍蒼世]


「つ…ま…?」
真剣な顔のまま頷く蒼世。
(つま?つまって…あの妻?奥さんってこと?…私が?)
固まっている雪音を自らの腕の中に引き寄せる。
「これまで、お前とは色んなことがあった。天火達と犲に入隊し、天火が抜けてからは犲のではなく俺専属のくの一になって裏の仕事を引き受けてくれた。様々な危険なこともあっただろう。だが、雪音はそれを嫌な顔せず弱音一つ吐かずに完遂してくれた」
天火には「うちの可愛い妹に無茶なことをさせるな」と何度か物申されたが。
やっと少しずつ理解の追いついてきた雪音。その顔は徐々に真っ赤に色付いてゆく。
「受けてくれるか?曇雪音」
少しの沈黙のあと、蚊の鳴くような声でやっと返事をした。
「は…い…。宜しく…お願いします…」


翌日、曇天火の自室にて。
「貴方の妹を私の嫁に下さい」
そう言って安倍蒼世は曇天火に頭を下げた。
一方の天火はというと無言。ただ、目の前の男が妹のためとはいえ己に頭を下げるような日が来ようとは。そんな驚きが天火の中を支配する。
「俺は…雪音に何度も助けられた。お前が犲を抜けてから俺が隊長になり、部隊を立て直す間あいつはずっと支えてくれていた。そして師匠達の死後、俺は新たな誓いを立てた。曇雪音を護り生き抜いてみせると」
「――本気、なんだな」
「ああ。先の大蛇との最終決戦を終えたら伝えるつもりでいた」
「そっかぁ…」
感慨深そうに目を閉じる。雪音に関してはそろそろ子離れ・妹離れしなくてはと薄々感じていただけに、実際その瞬間が来るとこうも離しがたく感じる。…それだけ、この兄妹は確かな絆で結ばれていたのだ。
「…よし!蒼世、雪音のこと…頼んだぞ。泣かせたらお前のことぶん殴りに行くからな!!」
「のぞむところだ」
こうして、雪音は安倍家に嫁ぎ海軍になる道を選んだ蒼世と互いに支え合ってゆくのであった。

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