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第19章 雨音の中で[真波山岳]


「その、無理にとは言わないけど、さ。知りたいんだ。先輩のことなら…ううん、先輩のことだからこそ」
「ぇ…?」
知りたい?私のことを?
何故…?真波は好きな人がいると確かに言っていた。なのに何故私のことを知りたいというのだろうか。
私の反応に少し違和感を感じたのか私の顔を覗き込んできた。
「その反応…もしかしてさっき俺が言ってたこと聞いてなかったの…?」
「え…、え…?」
「うわぁ…そっかぁ…」
「あの、真波…?」
あまりの落ち込み具合に少し不安になってきた。なんだろう、私何か間違った解釈をしていたのか…?
「あのね、先輩。俺が好きなのは先ぱ…雪音先輩なんだよ」
「………え!?」
「わぁー驚いてるねぇ」
「え、だ、だって!ぃ、いつから!?そんな素振り全然…」
「俺はしてたつもりだったんだけどなぁ」
「信じられない…」
「うーん。じゃあこうしたら信じてもらえる?」
そう言って再び引き寄せられ、真波の腕の中にすっぽりおさまる。厚い胸板に顔を押し付けられ自然と顔に熱が集中していく。
「聞こえる?俺の心臓の音」
「ぁ…」
雨音に混じって鼓膜を震わせてくる心音。小さいけれど、でも確かに聞こえた。
(心臓の音…少し速い…?)
私自身の心音も早鐘をうっているが、真波のも近いくらい速く感じた。
「これで分かってくれた?」
「う、うん。でもなんで…」
「いつから、って聞いたよね。俺が先輩に惹かれ始めたのは多分荒北さんと黒田先輩が雪音先輩とじゃれてる時に見た笑顔だったと思う」
(え、いつの事だろう)
あの二人がじゃれてくるなんて案外よくある事だったりするのだが。何故かあの二人に気にいられてるらしいし。
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