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第19章 雨音の中で[真波山岳]


「ちょっと山岳!なにしてるの!?」
「あ、委員長」
「その人先輩よね?どうかしたの?」
「それが傘忘れてこの雨の中走って帰るって言うから引き止めてたところ」
委員長と呼ばれたお下げの子はよく真波といる所をみかける子だ。たしか幼馴染みなんだとか。
「それなら私予備あるんで貸しましょうか…?」
なんて気の利く子だろう。先輩として大人気ない気もしたが、有難くその厚意に甘えようと手を伸ばしかけたところでまた真波に阻止された。
「真波…?なぜ私の行動をいちいち止めるのだね…?」
「委員長大丈夫だよ。俺が先輩のこと送ってくから」
『え?』
委員長ちゃんと私の声が見事にハモった。それもそうだろう。私自身何を言われたのか分からない。
「で、でも山岳が持ってる傘ってひとつよね…?」
「うん。だから、ハイ。先輩入って」
「わ、わわ!」
「それじゃあ委員長また明日!」
手を引かれて真波と同じ傘に入り、そのまま引かれた手は私の肩に回されより彼と密着する体制になってしまった。
「い、いいの?あの子、真波と帰るつもりだったんじゃ…」
「大丈夫。それに、先輩とこうして帰れる機会なんて早々巡ってこないしさ」
声が近い。周りには人がまばらにいるが、雨音と早鐘をうつ自分の心臓のせいでたいして気にならないくらいになっていた。
らしくはないだろうが、少女漫画で「心臓の音が伝わりませんように」と思う描写が今ならとてもわかる。
(叶わない片想いなのは分かってるけど、こういう事されると勘違いしそうになるな…)
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