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第19章 雨音の中で[真波山岳]


「嘘でしょ…」
放課後、昇降口で思わず呟いた。
1日の授業が終わり今日は自転車部もオフの日だったからさっさと帰ろうとしたのだが、いざ昇降口まで来てみれば本降りの雨。
今日に限って寝坊しかけ、天気予報を確認し損ねてしまって雨が降るなんて知らなかったのだ。
(どうしよう…今日はもう予定ないしこのまま濡れて帰ってもいいはいいんだけど…)
しかし現在は3月。幾らか気温が上がってきていたとはいえ、こうも雨が降ってしまってはその気温も下がる。現にとても寒い。
「さすがに風邪ひきかねないよね…」
まさに立ち往生だった。親に迎えを頼もうにも今の時間は仕事だろうから希望は望めない。
(仕方ない。家ついてすぐ風呂入ればいっか)
雨の中を走って帰ろうと決め込みカバンを頭の上に乗せた時だった。
「あれ、先輩?」
「へ?」
背後を振り返ると、そこには後輩の真波山岳が此方を不思議そうに見つめ立っていた。
「お疲れ、真波。これから帰り?」
「うん。先輩も?」
「そう。今まさに帰ろうとしたところ」
「傘も持たずにこの雨の中を?」
「…………うん」
私だって好き好んで雨の中を駆け抜けて帰ろうなんて思ってない。傘があれば当然使ったさ!!
「もしかして忘れたの?傘」
「………。じゃあ真波、気をつけて帰るのだよ!」
「あ、ちょ、先輩待った!」
「止めるな真波!!私は走って帰るから気にするな!!」
「いや、気にするから!女の子を冷たい雨の中濡れて帰らせるわけにいかないから!!」
力ずくでも走り出そうとするが、流石は男の子。年下といえど彼の力には敵わないようだ。
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