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第18章 近付いた背中(後編)[金城真護]


その後、絶望的なまでに開いた箱学との差をスプリンターの鳴子君が精一杯、それこそ命を削るように坂を引き続け箱学に追いついた。しかし鳴子君はここで脱落、残ったのは総北が今泉君、小野田君、巻島先輩。一方の箱学は福富さん、東堂さん、真波君という最適の布陣。本来のエースがいる箱学に対して、こちらは急ごしらえのエース。それでも今泉君はエース対決で福富さんを抑え、巻島先輩も東堂さんを福富さんの元へ行かせないように牽制、後方から脅威の追い上げをしてきた御堂筋君、更にそのあとから登ってきた真波君と小野田君。遂にトップ争いが小野田君と真波君の一騎打ちとなり、ほんの僅差で小野田君が1位を勝ち取った。
こうしてインターハイは総北の総合優勝で幕を閉じた。
総北は見事王者箱学を打ち破り、栄光を手にしたのだ。
華々しい壇上に登る総北メンバーを見つめ、そっと会場を後にした。


「あ。貴女は確か、総北のマネージャーさん…?」
「えと、真波山岳…くん?」
「行かなくていいんですか?」
「うん、いいの。私は成り行きで自転車部のマネージャーになったから…なんとなく、場違いな気がしちゃって」
「それでも、選手たちの支えになっていたのは間違いないと思いますよ?…お迎えも来たみたいだし、僕はこれで」
「へ?」
首を傾げる私の後方をニッコリと笑顔で見る真波君。その先を視線で追うといつの間にか背後に金城先輩が立っていた。
「真波、済まないが雪音を借りるぞ」
「どうぞどうぞ、僕もそろそろ戻るところでしたし」
「雪音場所を変えよう」
「は、はい…」
金城先輩に手を引かれて移動する間、片足を引きずる先輩の姿が痛々しかった。
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