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第18章 近付いた背中(後編)[金城真護]


3日目、インターハイ最終日。
幹ちゃんとレース開始前のラインにいた時、広島呉南の待宮さんがちょっかいを出してきた。
「悪運頼みで勝利できるほど、箱学も総北も甘くないですよ」
「なに…?」
「貴方達も去年の雪辱を晴らすために努力してきたのでしょう。でも箱学は王者と呼ばれるだけの実力があるからこそそう呼ばれ、総北は打倒箱学を目標にずっと血のにじむような努力をしてきた。最後は悪運が強いって理由だけで勝ち取れるほど甘くなんかない」
「ほぉ?なら、ワシら呉南が1位を勝ち取ったら君のこと貰おうか」
「いいですよ、やれるものならやって下さい。最終日の今日、1位を勝ち取るのは総北です」
最後は悪運が強くて勝ち残ってきただなんて箱学と総北をバカにするような言い方が気に食わなくて思わず言ってしまった…。
ハッと我に返り、ギギギと金城先輩を見やると総北だけでなく箱学も呆気に取られた顔をしていた。
「み、みみみ、みなさん!!そういう事なので頑張って下さい!!お願いします!!本っ当にお願いしますね!!!」
涙目になりながらも必死に訴える私の姿に若干引き気味の人もいたけれど、最後は任せろって言ってくれた。
「信じてますから!」
その言葉を背に、それぞれが順にスタートしていった。



3日目は2日分の疲労もあってか、総北は途中だんだんとバラけてしまった。それでも必死に食らいついて、待宮さんの策略をどうにか突破。箱学の荒北さんが真波君と小野田君を引いて押さえ込んでくれたらしい。そのお陰で呉南は戦意喪失。あとでお礼を言いに行かねばなるまい。
そしてゴールへ続く長い坂の手前。田所先輩が渾身のスプリントを発揮して列を外れ総北が箱学に並ぶも、金城先輩は2日目の膝の痛みが再発。無茶を通して坂直前まで総北を引いて脱落した。
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