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第17章 遠くに見える背中(前編)[金城真護]


「…嫌がっているようだな」
再び発せられた声は先程よりも低く、威嚇するような感覚がした。
「チッ!」
それに怯んだ篠宮先輩は苦い顔をして私の手を荒々しく放し、どこかへ行ってしまった。
「た、助かっ、た…」
気が抜けてヘナヘナとその場にヘタり込む。廊下の冷たさが心地いいくらいに感じた。
「大丈夫か?」
掴まれて少し赤くなった腕をさすり苦笑しながら金城先輩を見上げた。
「な、なんとか…。ありがとうございました金城先輩」
「いや…」
(助かったのはいいけど今ので腰抜けちゃって立てないや…。恐怖からか少し震えてるし、早く立ち去らないと余計に迷惑かけちゃう)
少し考える素振りを見せたあと、金城先輩から思いもよらぬことを言われた。
「すまない、もしかして君はいつも図書室から外を眺めている子…だろうか?」
「へ!?な、ななな、なんでそれを…!」
ヤバイヤバイヤバイ!!まさかバレていただなんて!何時から?気付かれていないと思い込んでた自分が恥ずかしい!!
熱が顔に集中していくのが自分でわかる分、更に羞恥心が煽られる。
「もし君さえ良ければ、自転車部の見学でもしていかないか?篠宮の件もあるしな」
「ぇ…?いいんですか…?」
「嗚呼。部活が終わったら送ろう」
「そ、そんな!そこまでいて頂かなくても大丈夫ですよ!」
「俺がそうしたいんだ」
(ほぼ見ず知らずの私にここまでしてくれるなんて…金城先輩は優しいな…)
そして私が折れて、いつの間にか震えもおさまっており結局は金城先輩の有難い申し出に甘えることになった。
ただ見ているだけだと手持ち無沙汰で1年のマネージャーの子に教わりながら仕事を手伝った。
間近で見る金城先輩はやっぱりかっこよくて、思わず見惚れてしまうほどだった。
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