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第17章 遠くに見える背中(前編)[金城真護]


あの日から数日。私は篠宮先輩からとにかく逃げ回っていた。
(はぁ…なんで諦めてくれないのあの人。そもそも私が見てたのは金城先輩であって篠宮先輩じゃないのに…)
でも、状況的には私も同じだ。
むしろ、私の方が条件は悪い。私は、きっと。彼に…金城先輩に気付いてもらえてすらいないのだから。
「そろそろ諦めてくれたかな…」
隠れ場所に使っていた空き教室からそっと外を伺い、誰もいないことを確認してそろりと教室から出た。
「やぁっと出てきてくれたね」
「!?」
「待ってたよ、雪音ちゃん?」
「ぁ…な、なんで…」
周りに誰もいないことをちゃんと確認していたはず。なのに何でバレてるの!?
「残念だったね。でももう隠れんぼは終わりだ」
「な、なんで…私なんですか…?」
私なんかじゃなくても、篠宮先輩のいう清楚系の女子なら他にもっと可愛い子綺麗な子がいるはず。なぜ私にこだわるのかが分からない。
「なんでってそりゃあ…君、押しに弱そうだからヤれそうじゃん?」
「なっ…!?」
つまりは身体目当てだったという訳だ。気が弱そうだから上手く丸め込みやすいと判断したんだろう。
(最悪だ…こんな人に目をつけられるなんて…!)
私は一瞬の隙をついて逃げ出した。
必死に必死に廊下を走って、もう自分がどこにいるのかも分からないままただひたすらに走った。
しかし、さすがはサッカー部の主将。すぐに腕を掴まれてしまった。
「さて、もう鬼ごっこは終わりにしよう」
「やめ…っ!」
掴まれた腕の痛みに諦めかけた時、第三者の声がした。
「何をしている」
「ぁ…あなた、は…」
「お…お前…!」
声の主は、私がずっとその背中を見つめていた人。
「金城、せん…ぱい…!」
視界が滲む。まさに救世主が目の前に現れたかのような気持ちだった。
「君は…。篠宮、彼女は嫌がっているように見えるが」
「そ、そんなことねぇよ!な、雪音ちゃ――」
「は、放してください!!」
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