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第17章 遠くに見える背中(前編)[金城真護]


そうして図書室から眺める日々が続き更に2ヶ月が過ぎた。私は未だに遠くから彼の背中を眺めているだけで何も変わっていない。
最近恐らく1年であろう新顔が数人増え、自転車部は毎日練習に力を入れ充実した日々を過ごしていることだろう。
(まぁ。私もこうして好きな人を眺めていられるだけで充実してる、けど…)
最近、ただこうして眺めているだけの日々に胸がチクリと痛むことが増えてきた。
高望みはしちゃいけない。私は彼に釣り合わない。もっともっと相応しい子がいる。
そう頭ではわかっているのに、心がそれを否定するかのように痛む。願わくば、彼の隣にいるのが私であったなら、と。
胸の苦しさに顔をしかめていると、私が座っている席の反対側から突然話しかけられた。
「ねぇ、君」
「!?へ、は、はい!わ、私ですか!?」
「君以外に誰がいるのさ」
そう笑いながら答えた人物は、サッカー部のイケメン主将と名高い篠宮和真先輩だった。クラスの女子たちが騒いでいたので何となく覚えていた。
「えと、篠宮先輩…?」
「お、知ってるんだ?俺の事」
「ええ、まぁ…。クラスの子達がイケメンだって騒いでいたので。それで私なんかになんの御用でしょうか?どなたかへの伝言ですか?」
「君さ、いつもここから俺の事見てるよね」
「え?」
「ファンの子達はグラウンドの方に来て応援してくれるんだけど、君はいつも図書室から見つめてくるからさ」
断じて違う。私が見つめていたのは自転車部の金城先輩だ。この人じゃない。
「君と恋人になってあげてもいいよ?俺、君みたいな清楚系とは付き合ったことないからさ〜」
「ぇ、ぁ…あの…」
「いーよいーよ、返事は分かってるから!」
ダメだ、この人全然こっちの話聞いてくれない!
「ご、ごめんなさい!!」
もう逃げるしかないと判断し、私は図書室を後にした。窓の外からの視線に気付かずに。
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