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第13章 その勇姿を焼き付けて[煉獄杏寿郎]


「弟の千寿郎には自分の心のまま、正しいと思う道を進むよう伝えて欲しい。父には、体を大切にして欲しいと。それから、竈門少年。俺は君の妹を信じる。鬼殺隊の一員として認める。汽車の中であの少女が血を流しながら人間を守るのを見た」
命をかけて鬼と戦い、人を守る者は誰が何と言おうと鬼殺隊の一員。その言葉は誇り高き炎柱 煉獄杏寿郎らしい言葉だった。
「胸を張って生きろ。己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと、心を燃やせ。歯を喰いしばって前を向け。君が足を止めて蹲っても、時間の流れは止まってくれない。共に寄り添って悲しんではくれない。俺がここで死ぬことは気にするな。柱ならば、後輩の盾となるのは当然だ。柱ならば誰であっても同じことをする。若い芽は摘ませない」
こうして喋っている間にも煉獄の胸からはどくどくと血が流れ続けている。命が、じわじわと流れ出ている。
「竈門少年、猪頭少年、黄色い少年、雪音、もっともっと成長しろ。そして、今度は君たちが鬼殺隊を支える柱となるのだ。俺は信じる。君たちを信じる」
そして、一呼吸置いて煉獄は雪音へと視線を向けた。
「最後に…雪音」
「…はい」
「君は俺が課した鍛錬を懸命にこなしていたな。少女に課すには過酷すぎる内容だっただろう。それでも君は泣き言ひとつ言わずに努力してくれた。君は俺の誇りだ」
「しは…っ、杏寿郎さん…!」
「!…よもや、最期に俺の名を呼んでくれるとは」
「そんなのっ!いくらでも呼びます!お願いします…私を置いて逝かないで…っ!お願い、します…っ」
「…すまない。君に、伝えたいことがあるんだ。聞いてくれるか」
「はい…っ」
「俺はずっと君のことを慕っていた。想っていたんだ。本当は言わないつもりでいた。だが、この生を終える瞬間…想いを伝える決心が着いた」
「言い逃げなんて…ずるいです…っ!私だってずっとずっと…貴方を想ってたのに!こんな形でだなんて…」
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