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第13章 その勇姿を焼き付けて[煉獄杏寿郎]


「死ぬ…!!死んでしまうぞ杏寿郎!鬼になれ!!鬼になると言え!!お前は選ばれし強き者なのだ!!!」
猗窩座の叫びに応じることなく、煉獄は自らの日輪刀を猗窩座の頸へと突き立てた。
その姿はまさに命の炎を全力で燃やしているようにも見え、雪音の頬を透明な雫が滑り落ちてゆく。
(いや…!やめて…師範…!!)
しかし、今この場で煉獄が引いてしまえば上弦に太刀打ちできる者はいない。なにより、胸の内を叫んでしまえば彼の誇りを傷つけることになってしまうことが分かっているからこそ。口をつぐみ、涙することしか出来ない。
顔に迫る猗窩座の空いていた片方の拳にも反応し、ガシッと放すまいと渾身の力で掴む。
そして空が白みはじめ、それに気づいた猗窩座は明らかな焦りを見せる。
太陽が上るまで抑えられれば、この上弦を討てる。あと一息という所だった。
猗窩座は自分で両腕を切り落とし、煉獄の拘束から逃れた。
「っ卑怯者!」
森の中へと走り去っていく猗窩座の背に向かって雪音も炭治郎も、卑怯者と思いの丈を叫んだ。
「もうそんなに叫ぶんじゃない。腹の傷が開く、君も軽傷じゃないんだ。竈門少年が死んでしまったら俺の負けになってしまうぞ」
「師範…」
「こっちにおいで。雪音も、最後に少し話をしよう」
炭治郎と揃って煉獄の元へと歩き、雪音は彼を支えるようにして側に座った。
「俺の生家、煉獄家に行ってみるといい。歴代の"炎柱"が残した手記があるはずだ。父はよくそれを読んでいたが…俺は読まなかったから内容が分からない」
どうやら、過去を思い出していた中で炭治郎が聞きに来たことのヒントを見つけたらしい。
それを伝え、呼吸で止血するよう願う炭治郎に否と答え、もうすぐ死ぬからと言葉を紡いだ。
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