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第13章 その勇姿を焼き付けて[煉獄杏寿郎]


戦闘員である私達は先程の下弦の鬼との戦いで万全の状態じゃない。そこに上弦の鬼が現れた。対応できるとすれば、今この場には柱である煉獄しかいない。
(なんでこんな時に…!)
私は悔しさから唇を噛んだ。
そしておおよそ常人では出せないほどの速さで地面に横たわる炭治郎目掛けて拳を打ち込もうとする直前、炎柱が即座に技を出して対応した。しかし、腕に当たりはしたが浅い。
距離を取った鬼は煉獄に鬼にならないかと誘いの言葉を告げた。
「見れば解る。お前の強さ。柱だな?その闘気、練り上げられている。"至高の領域に近い"」
「俺は炎柱 煉獄杏寿郎だ」
「俺は猗窩座。杏寿郎、なぜお前が"至高の領域"に踏み入れないのか教えてやろう。人間だからだ。老いるからだ、死ぬからだ。鬼になろう杏寿郎。そうすれば、百年でも二百年でも鍛錬し続けられる。強くなれる」
「老いることも死ぬことも、人間という儚い生き物の美しさだ。老いるからこそ死ぬからこそ、堪らなく愛おしく尊いのだ。強さというものは肉体に対してのみ使う言葉ではない」
鬼からは目をそらすことなく炭治郎は弱くない、侮辱するなと言った。
(師範…)
「何度でも言おう。君と俺とでは価値基準が違う。俺は如何なる理由があろうとも鬼にならない」
「そうか」
そこからは目で負えないほどの速さで技の応酬が繰り広げられた。助太刀に入る隙さえなく、ただ足でまといにしかならないという"死"が目に見えるようだった。
そして互角かと思われたその攻防は、確実に生身である煉獄へダメージを蓄積させていった。
煉獄と猗窩座、それぞれが大技を繰り出し土煙に包まれる。
「師範…っ!」
やがて音が止まり、土煙が晴れて2人の姿が現れた。
「う、そ…っ師範!!」
土煙が晴れた先には、猗窩座の腕が胸を貫通した煉獄の姿があった。
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