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第4章 散りゆくは〔雲雀恭弥〕




「散ればこそ いとど桜はめでたけれ 憂き世になにか久しかるべき」

「!?」
ハッとして寝転んでいた体を起こして声がした方を見た。
「なっ…!なななな…!!」
いつの間にいたのか、そこには我らが暴君様こと雲雀恭弥の姿が…ってマジでいつの間に!?
「え…と、入学式は…?」
恐る恐る問いかけると、特に嫌な顔をせずに隣まで歩いてきた。
「終わったよ。…で、さっきの歌は誰に向けたものだったんだい?」
「へ!?」
思わぬ問い。まさかあなたを思い浮かべていただなんて口が裂けても言えない。叶わないのはわかっているのだから。
「あー、えっと…な、なんとなく……?」
「あっそ」
自分から聞いといてその反応か。
「まさか君が百人一首を知っていたのは少し驚いたよ」
「まぁ…百人一首は恋を歌ったものが多いですから」
中には共感できるものもある。
叶わないとわかっていても止めることの出来ない想い。日に日に募る、悲しく苦しい想い。
「君は…――――」
「それじゃ!私は教室に戻りますのでお邪魔しましたぁ!!」
そして即座に立ち上がり出入口の扉へとダッシュで向かおうとするが、背後から片手を強く捕まれ阻害された。
「あの、まだ何か――」
「君、風紀委員に入って書類整理係になりなよ」
「は!?」
急に何を言い出すんだこの暴君。しかもあの暴力集団に入れと?
「何言ってるか理解出来ませぬ!私には保健委員というものが」
「解任して風紀委員にすればいいだけでしょ」
え、これ職権乱用とかいうやつやないの??え?
(…でも)
でも、この話を受け入れれば私は彼の近くにいられる"確たる理由"ができる。
(遠くから眺めてるだけで良かったんだけどな…)
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