• テキストサイズ

短・中編集

第4章 散りゆくは〔雲雀恭弥〕


「それと。君、僕のこと避けていただろ」
「い、いえ…そんなことは…。というか、貴方群れるの嫌ってるじゃないですか」
「君もだろう」
「え…」
なぜわかったのだろう。私が周りの人達と一線引いてること。
「いや、君の場合は群れるのが嫌というよりも"裏切られるのが怖い"から…という方が正しいね」
「なに、いって…」
「君ならいいって言ってるんだよ。下手に群れようとしない」
「……」
ここで私は疑問に思った。
今日の彼はいつもよりずっと饒舌だし、急に咬み殺そうとしてこない。
――――なぜ?
「…はぁ。君もよくよく鈍感だよね」
「しっ――!?」
失礼な、と言おうと一歩前に出る。しかしそのまま腕をひかれ、口元に暖かな感触、そして目の前には…雲雀恭弥の整った顔。
「っ!?」
ボンッと効果音がつきそうなほど急速に顔へ熱が集中するのが分かる。そしてこの行為の意味、それを分からないほど私も鈍感ではない。
「なんで…」
叶うことなんてないと思っていた。遠くから眺めてるだけで十分だった。…でも。
「"コレ"が答えだよ。雪音」


暖かな春風に吹かれ、桜の花弁が舞い散る中。
同じく共に散っていったのは、"諦めていた弱い自分"だった。

‡オワリ‡
/ 91ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp