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第4章 散りゆくは〔雲雀恭弥〕


4月
出会いと別れの季節とはよくいったものだ。
今年は咲き始めるのが遅かった桜は、4月に入ったばかりの現在は満開。並盛中学校の校庭を暖かな春風が撫でてゆく。
そしてわたくし天霧雪音はというと並盛中の屋上で寝転び、この春の陽気を満喫中である。
まぁ、4月に入ったばかりという所でお気づきの方もいらっしゃることだろう。
そう!今の時間、在校生と新入生は入学式を行っているのだ!!
そしてその入学式に我らが暴力だ…ン"ン"風紀委員の委員長たるあの暴君様がサボ…出席しないわけがないのだ。

これは屋上でのんびりするまたとないチャーンス!とばかりに人目を盗み、抜き足差し足忍び足で屋上へと辿り着いたわけだ。

「普段は暴君様が占領してて日向ぼっこ出来ないんだよねぇ〜」
なんたって、授業をサボろうものならどこにいようと噛み殺しに来るような暴君様だ。あの人のサボり発見レーダーどうにかならんかね。
(しっかしなぁ…。暴君様は顔だけはいいんだし、黙ってればよってくる女の子は数知れず、なんだろうな)
そして、もちろんサボる時は彼の目を盗んではいるものの、私もその"よってくる女"の一人でもある。
ただ遠くから眺めてるだけでいい。近づいてしまったら、きっと今のままではいられないから。
私の想いは、私の中だけ秘めていたい。いずれ桜のようにちってしまうのだから。

「…世の中に たえて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし」
ふと浮かんだ百人一首の歌。私も、雲雀恭弥という人に出会わなければこんな想いも抱かずにすんだのだろうか。
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