第7章 玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば…
逃げろ!
本能は、そう言う。
だが、
逃げられなかった。
逃げようとしたところを高杉の腕の中に閉じ込められ、壁に頭を打ち付けられ、景色が真っ白になる。
抗議の声をあげようと、口を開いた隙を取られ、唇を塞がれた。
何も見えなくなったあと、
体がふと、浮く感触がする。
貴)んッ……
苦しくなって、彼の胸板を押せど、
こんな状況で、抵抗できるわけもなく、彼になされるがままだった。
しばらくしてようやく、
彼は私を解放してくれた。
儚い水音が止むの同時に、
銀色の糸が、紡がれる。
そして、組み敷かれる。
なぜこんなことをしたのか、
なぜ私が女であることを知っているのか、
あなたの目的は一体、何なのか、
聞きたい質問が喉まで出たが、
それより先に、
彼が、口を開いた。
高)残念だが、お前の正体は、
もうすでに分かってらァ。
上がった息のまま、私は答える。
貴)わ、私が何だというのですか?
彼の端正な顔が、どんどん近づいてくる。
高)どうせお前の目的は、
真選組の沖田総悟を、助け出すことだろう?
違うか?
なぜ彼が、それを知っているのか。
貴)なぜそう思うのですか?
高)…何でだと思う?
当ててみろ。
貴)知りませんよ、
プイッと顔を背けると、
顎を捕まれ、引き戻される。
嫌でも逃げられなくなった。
強気な顔をするが、
彼には、通じない。
高)お前が知らないわけがないだろう、真選組の 久坂 双葉さん?
あなたがなぜ、
それを知っているのか、
どうして?
どうして、なぜ知っているの?